NIMS-インフラ構造材料パートナーシップ~材料技術でインフラ長寿命化 ・ 強靭化に貢献~

NIMSインフラ構造材料パートナーシップ 2023年度第1回研究会

主催

国立研究開発法人物質・材料研究機構 構造材料研究センター

NIMSインフラ構造材料パートナーシップ

日時

2023年5月18日(木)13:30~17:10
※17:15より技術交流会がございます。

技術交流会会費:2,000円(当日、受付に現金にてお支払いください。)

方式

現地およびオンラインのハイブリッド開催
※オンライン配信はwebexを使用して行います。

場所

物質・材料研究機構 千現地区 先進構造材料研究棟5階 コンファレンスルーム

趣旨

新型コロナウイルス感染症の発生から3年が経過し、5月8日からは5類感染症に位置づけられるなど、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。また、今年度からは第3期SIP“スマートインフラマネジメントシステムの構築”も開始される予定です。
これまではwebセミナー中心だったパートナーシップの活動も、今年度は、皆様との交流がより発展する様な方向に展開していきたいと思います。今年度最初の活動として第1回研究会を5月18日(木)に開催いたします。

今回は、九州大学の貝沼重信教授に「鋼構造物の効果的な維持管理のための腐食弱点部位の特定と腐食進行性評価」について、名古屋大学の荒木慶一教授に「形状記憶合金構造材の開発と建設物への応用展開」についてご講演いただきます。また、NIMSのインフラ構造材料技術の紹介も行います。研究会後には技術交流会を予定しておりますので、現地参加についても是非ご検討ください。

プログラム

  • 開会挨拶13:30~13:40

    土谷浩一 NIMSインフラ構造材料パートナーシップ事務局長

  • 13:40~14:40

    「鋼構造物の効果的な維持管理のための腐食弱点部位の特定と腐食進行性評価」

    九州大学大学院工学研究院 教授 貝沼重信氏

  • 14:40~15:40

    「形状記憶合金構造材の開発と建設物への応用展開」

    名古屋大学大学院環境学研究科 教授 荒木慶一氏

  • 休憩

  • NIMSインフラ構造材料技術シーズ紹介16:00~17:00

    • 「ハイパースペクトル解析による鉄鋼材料の腐食リスク予測」

      構造材料研究センター 材料評価分野長 片山英樹氏

    • 「安価なスクラップ鉄から作る耐食鉄筋」

      構造材料研究センター 独立研究者 土井康太郎氏

    • 「Corrosion evaluation of steel rebar and steel cable using the electromagnetic method/電磁波による鉄筋および橋梁用ケーブルの非破壊腐食判別技術」

      構造材料研究センター 主幹研究員 Dongfeng He氏

    • 「双方向変態を活用した耐疲労鋼材の開発」

      物質・材料研究機構 構造材料研究センター 主任研究員 吉中 奎貴氏

  • 事務連絡、閉会挨拶17:00~17:10

  • 技術交流会(軽食・飲み物付き)17:15~19:15

  • 講演概要

    ・「鋼構造物の効果的な維持管理のための腐食弱点部位の特定と腐食進行性評価」

    (九州大学大学院 貝沼重信)

    大気環境における鋼構造物を安全かつ経済的に長期間供用するためには,構造上重要部位や維持管理困難部位における腐食弱点部位を正確に把握し,その腐食進行性を定量評価する必要がある.また,致命的損傷の発生を予知・予防保全して,弱点部を高耐久性化することで,構造物全体を長寿命化することが重要になる.本講演では鋼構造物の維持管理の主な課題を概説した上で,鋼道路橋の代表的な腐食損傷の要因を解説する.また,腐食弱点部位を特定するための部位レベルの腐食進行性の評価方法について概説した上で,構造物の評価事例を紹介する.

    ・「形状記憶合金構造材の開発と建設物への応用展開」

    (名古屋大学大学院 荒木慶一)

    近い将来に高い確率で発生が危惧される巨大地震に対して、地震後のインフラ構造物の機能維持は最重要課題である。本講演では、課題解決に向けたキーマテリアルとして開発が進む銅系形状記憶合金の単結晶構造部材とインフラ構造物への適用例について紹介する。大変形後も荷重を除くだけでヒステレシスを描き変形回復する超弾性特性を持つ形状記憶合金を構造物に適用し、地震中の最大変形に加えて地震後の残留変形を抑制することで、地震後のインフラ構造物の継続利用や超早期復旧が可能になる。事業化に向けた出口戦略として、市場ニーズが高い高速道路橋や戸建住宅への適用性について民間企業等と進めている国内外の共同研究の例を紹介し、今後の持続的で広範な社会実装に向けた議論を行いたい。

    ・「ハイパースペクトル解析による鉄鋼材料の腐食リスク予測」

    (物質・材料研究機構 片山英樹)

    近年の橋梁の高経年劣化に対し、我が国では現在、5年ごとの近接目視観察を基本とする点検・維持管理が行われている。しかしながら、橋梁のほとんどは地方自治体が管理しており、人員不足や財政不足などの問題からこれらの定期メンテナンスが大きな負担になっている。そこで、より簡便な腐食劣化状態の点検手法として連続した多くの波長情報の取得ができるハイパースペクトルカメラに着目し、鉄鋼材料の耐食性評価への適用の可能性について検討した。

    ・「安価なスクラップ鉄から作る耐食鉄筋」

    (物質・材料研究機構 土井康太郎)

    コンクリート構造物の長寿命化のため、耐食性を高めた鉄筋の開発が求められている。これまでエポキシ被覆鉄筋やステンレス鉄筋、亜鉛めっき鉄筋等が実用化されてきたが、コストや効果の面で課題が残されている。我々は、純金属を用いずに安価な鉄含有合金およびスクラップ鉄のみで製造可能であり、コンクリート中で優れた耐食性を示す耐食鉄筋を開発した。この新耐食鉄筋は従来鉄筋よりも長期耐食性に大きく優れるのみならず、機械的性質や接合性にも優れるため、新規構造物の建設や劣化構造物の補修への活用が期待できる。

    ・「電磁波による鉄筋および橋梁用ケーブルの非破壊腐食判別技術」

    (物質・材料研究機構 Dongfeng He)

    コンクリート中の鉄筋の腐食は,コンクリートの強度性能を低下させるとともに,腐食生成物の体積増加によるコンクリートのひび割れの原因となる.腐食を早期に発見することは,コンクリート構造物の安全性評価や補修に重要である。コンクリート中の鉄筋の破断、位置、腐食の評価には、電磁誘導(交流磁場)法、マイクロ波レーダーシステム、サーモグラフィ技術などが用いられてきた。低周波電磁誘導法は、他の方法と比較して、低コストで操作が簡単という利点がある。また、コンクリートの水分が検出結果に与える影響も少ない。我々は、鉄筋の腐食を評価する電磁誘導法を開発した。励磁コイルに交流電流を流すと、交流磁界が発生することにより、鉄筋の表面に渦電流を誘導した。検出コイルは、渦電流によって発生する磁場を測定するために使用した。アンプ後の信号は、ロックインアンプに送られた。ロックインアンプからは、2つの信号が得られた: X信号(励磁電流と同相の信号)とY信号(励磁電流と90度の位相差の信号)である。X信号とY信号を用いてプロットしたX-Yグラフの傾きから、鉄筋の腐食を判定することができる。本システムは、吊り橋のケーブルの鋼線の腐食評価にも利用されている。

    ・「双方向変態を活用した耐疲労鋼材の開発」

    (物質・材料研究機構 吉中 奎貴)

    建築物の耐震化に資する鋼材として繰返し弾塑性変形に対し優れた疲労寿命を示す鋼材開発に取り組んでいる.本講演では双方向マルテンサイト変態がカギとなる耐疲労鋼設計とその適用事例とともに、疲労耐久性に加え溶接性や耐食性を付与した成分設計等の最近の開発内容についても紹介する。

申し込み方法および手順

令和5年5月15日(月)までにNIMSインフラ構造材料パートナーシップ事務局(rcsm-unei@ml.nims.go.jp)まで参加者とその方のe-mailのアドレス、参加方法(現地、オンライン)、現地参加の方は、技術交流会(会費制)参加の有無をご連絡ください。技術交流会参加ご希望の方は5月11日(木)までにご連絡ください。技術交流会会費:2,000円(当日、受付に現金にてお支払いください。)

ご連絡頂きましたアドレスに5月17日(水)に招待状をお送りいたします。また、プロジェクターや大型のモニター等を使用して複数名で聴講なさる場合は、代表者のお名前とe-mailアドレスと併せて、聴講する方々のご所属とお名前をご連絡ください。

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